化粧品に含まれる防腐剤

化粧品に防腐剤が含まれる理由

コンビニやネットショップでも気軽に買える化粧品（コスメ）。化粧品は水分が多いことから、雑菌やカビが繁殖しやすいものでもあります。食品と同じくらいデリケートなものではあるにもかかわらず、ほとんどの人が、開封後に常温で保存されていると思います。実はこの常温保存も雑菌が繁殖する理由の一つです。もし雑菌やカビが繁殖してしまったコスメを使用してしまうと、効果が変わってしまうばかりか、肌にトラブルを起こしてしまう可能性があります。
さらに、化粧品は医薬品や医薬部外品と並び、薬事法によって決まり事が定められています。そこには化粧品は「三年を超えて性状及び品質が安定なものでなければならず、三年以内に変質する恐れのあるものは使用期限を表示しなければならない」と記載されています。化粧品は未開封の状態で三年間品質を保証できるものでなければならないということです。
お客様の肌を守るためにも、また薬事法を守るためにも、化粧品には品質を長期間安定させる目的で防腐剤が使われているのです。

化粧品に使われている主な防腐剤の種類と安全性

パラベン

化粧品に使う防腐剤の一つにパラベンがあり、最も知られている防腐剤とも言えるのではないでしょうか。
化粧品に最も使用される防腐剤の一つで、食品、医薬品にも使われています。歴史も古く、昭和初期にはすでに化粧品に使用されていたと言われています。
パラベン類は人体への毒性が低く、微生物、特にカビや酵母に対して効果があります。

パラベンの物質名は「パラヒドロキシ安息香酸エステル（別名：パラオキシ安息香酸エステル)」です。いくつかの種類のあるパラベンの中でも、主に、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンが使用されています。

１種類のパラベンでも化粧品の長期保存はできますが、複数の種類のパラベンや他の防腐剤を組み合わせることで、相乗効果が得られるようになります。現在コスメに含まれるパラベンは一般的に化学合成で作られますが、パラベンは天然物中にも存在し、ニンジンやトマト、オリーブオイルや菜種油にも含まれています。

安息香（あんそくこう）

コスメに香料として利用される安息香は、アンソクコウノキという植物が産出する樹脂のことです。（安息香はベンゾインとも呼ばれますが、化合物名のベンゾインとは違うものです。）
安息香の主な産地はタイ、ラオス、ベトナムの高原地方を中心とするインドシナ半島とインドネシアスマトラ島です。

安息香には微生物の増殖を抑えるはらたきがあり、食品にも使われています。水に対して溶けにくい性質があり、安息香酸ナトリウムをあわせて、水に溶けやすい状態にして使用されています。

デヒドロ酢酸ナトリウム

デヒドロ酢酸に水溶性のナトリウム塩を反応させて水に溶けやすくし、水溶性のデヒドロ酢酸ナトリウムです。
デヒドロ酢酸と同様の特性を持ち、アルカリ性に不活性で、酸性度が高くなるほど抗菌力が高くなり、細菌、酵母、カビの成長を抑制し、防腐性が高い成分です。
ヒノキチオール
ヒノキチオールは、ヒノキの一種である「ヒノキアスナロ」から採取される薬効成分で芳香族化合物の一つです。
タイワンヒノキの精油成分から発見され、当時、自然界には存在しないといわれてきた七角形の分子構造を持ち、化学史上に残る偉業として世界的に評価されました。
皮膚病の原因細菌や糸状菌に対し優れた抗菌性を示すため、化粧品にも調合されているものがあります。

フェノキシエタノール

抗菌性は強くはありませんが、パラベンが効きにくい大腸菌、サルモネラ菌などグラム陰性菌と呼ばれる菌に効果があるとされています。
天然には日本茶の玉露の揮発成分や、綿花地帯の近辺に見出される空中浮遊物質としても報告されています。

防腐剤による炎症

コスメに含まれる防腐剤によっても、肌に炎症を起こすことがあります。肌の性質は個人によって違い、厚生労働省が決めた許容範囲内の配合であっても、発疹や肌の炎症によって皮膚が赤くなったり、痛みを感じたりします。
これらの症状は「化学物質過敏症」「接触性皮膚炎」と診断されることが多く、肌につけた直後に反応が無い場合でも、時間が経過する中で防腐剤が血液中に入り込み、アレルギーを起こす抗体が作られ、突然発症することがあります。
「防腐剤無添加」と称しているコスメの中には、BG（ブチレングリコール）、ペンチレングリコールなどの抗菌作用のある保湿剤を使うものがあり、これらが原因となって炎症を起こすこともあります。
皮膚がかぶれてしまったら悪化する前に皮膚科を受診することをおすすめしますが、食品の他、基礎化粧品やメイク用品の全てが原因となることも忘れてはいけません。
水分を含まないコスメや、油分だけで作られたコスメは防腐剤不使用の化粧品もありますが、化粧品のほとんどに防腐剤が使われているため、必要最低限の防腐剤で品質のよい化粧品を選択する心がけも大切です。